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烏衣巷

2012.05.11

朱雀橋辺野草花
烏衣巷口夕陽斜
旧時王謝堂前燕
飛入尋常百姓家

 

七七二年生まれの劉禹錫(りゅううしゃく)の「烏衣巷(ういこう)」。烏衣巷は東晋(とうしん、三一七~四一九)の都の建康(けんこう、今の南京)にあった繁華街。

 

■読みと解釈
朱雀橋辺野草花
朱雀橋(すざくきょう)の辺りには野草の花さき
[朱雀橋の辺りには野の草の花が咲き]

 

烏衣巷口夕陽斜
烏衣巷の口には夕陽は斜めなり
[烏衣巷の入り口には夕日が斜めに射している]

 

旧時王謝堂前燕
旧時(きゅうじ)王と謝の堂の前の燕は
[その昔 王氏と謝氏の殿堂の前に巣作りしていた燕は]

 

飛入尋常百姓家
飛んで尋常(じんじょう)の百姓(ひゃくせい)の家に入る
[(今は)普通の庶民の家に飛んで入っている]

 

 

■注目点
約四百年前の繁華街の烏衣巷をどう詠むか。詠み方に注目。
前二句は対句(ついく)。朱雀橋も烏衣巷も名所。朱は赤、烏は黒。色の対照。その名所も今は野草と夕陽。華麗さはない。寂しさを感じる。
王氏も謝氏も貴族。烏衣巷に居を構え、東晋王朝を引っ張った、貴族中の貴族。その貴族の殿堂に燕が巣を作る。その燕が今は、庶民の家に巣を作る。優雅さはない。寂しさを感じる。
消えた烏衣巷の華麗さ、優雅さを、野草、夕陽、燕で詠む。着眼点が面白い。

 

《PN・帰鳥》