山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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滁州の西の澗

2017.06.09

独憐幽草澗辺生

上有黄鸝深樹鳴

春潮帯雨晩来急

野渡無人舟自横

 

七三七年生まれの韋応物(いおうぶつ)の「滁州(じょしゅう)の西の澗(たにがわ)」。

 

■読みと解釈

独憐幽草澗辺生

独り憐(あわ)れむ幽草(ゆうそう)の澗の辺りに生ずるを

[西の谷川付近に人知れず生えている草を独りして愛でている]

 

上有黄鸝深樹鳴

上には黄鸝(こうり)の深樹(しんじゅ)に鳴く有り

[上空には唐鴬(からうぐいす)が生い茂る樹木の中で鳴いている]

 

春潮帯雨晩来急

春潮(しゅんちょう)は雨を帯びて晩来(ばんらい)に急なり

[春の水は雨が降り出して水が増え晩になると流れが速くなった]

 

野渡無人舟自横

野渡(やと)には人無くして舟は自(おのずか)ら横たわれり

[田舎の渡し場には人影はなく小さな舟がぽつんと横たわっている]

 

 

■注目点

作者の心情に注目。

詩題の滁州は中国南方の長江の下流の地。その西に谷川がある。

谷川の景を詠む題材は幽草、黄鸝、深樹、春潮、野渡。

作者の韋応物は小舟に乗り、西の谷川まで来て、世俗に知られず、もの静かな幽草を愛でたり、俗外の樹木の中で鳴く唐鴬の声を聞いたり。愛でたり聞いたりした後は、小舟に乗り帰るつもりだったのに、谷川は水が増え流れが速くなり、帰るのは適わず、途方に暮れる韋応物。韋応物は情景に浸り、不安に思っているのだろうか。いや不安には思わず、情景に浸り切っているのではないだろうか。

 

《PN・帰鳥》