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湘南の即事

2011.12.09

盧橘花開楓葉衰
出門何処望京師
沅湘日夜東流去
不為愁人住少時

 

七三二年生まれの戴叔倫(たいしゅくりん)の「湘南(しょうなん)の即事」。湘南は湘水の南。揚子江中流域。即事は目の前の事。

 

■読みと解釈
盧橘花開楓葉衰
盧橘(びわ)の花開けば楓(かえで)の葉は衰う
[枇杷の花が咲くと楓の葉は萎んでしまう]

 

出門何処望京師
門を出でて何(いず)れの処(ところ)にか京師(けいし)を望まん
[門を出てどこで都(長安)を眺めよう]

 

沅湘日夜東流去
沅(げん)と湘は日夜東に流れ去り
[沅水も湘水も昼も夜も東へ流れて行き]

 

不為愁人住少時
愁うる人の為(ため)に少時(しょうじ)も住(とど)まらず
[愁いに沈む人のために瞬時も止まってはくれない]

 

 

■注目点
湘南と京師の関係に注目。題からすると、作者は南方の湘南にいて、湘南から北方の京師長安を眺めている。
季節は枇杷の花が咲き、楓の葉が萎む晩秋から初冬。
愁うる人。それは作者自身。作者は今、愁いに沈んでいます。沈むわけは不明ですが、しきりに長安を眺めている。長安へ帰りたい。だが長安は見えない。帰れない。だから沈んでいるのでは。
帰れぬ思いを沅水と湘水に託します。この水に乗れば帰れるかも。しかし、水は瞬時も止まらず、乗ることはできません。
晩秋から初冬。沅水と湘水。沈む作者の思いを助長します。

 

《PN・帰鳥》