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海棠渓

2014.03.21

春教風景駐仙霞

水面魚身総帯花

人世不思霊卉異

競将紅纈染軽沙

 

八三二年に亡くなった女詩人薛濤(せっとう)の「海棠渓(かいどうけい)」。海棠渓は渓谷の名。海棠は春に咲く花。

 

■読みと解釈

春教風景駐仙霞

春は風景をして仙霞(せんか)を駐(と)めしめ

[春はこの風景に仙郷の霞を引き止めさせ]

 

水面魚身総帯花

水面の魚身は総(すべ)て花を帯びたり

[水面を泳ぐ魚はみな全身に(海棠の)花を着ている]

 

人世不思霊卉異

人世(じんせい)は霊卉(れいき)の異なるを思わずして

[世の人は神秘的で普通とは違う海棠を思い慕わず]

 

競将紅纈染軽沙

競って紅纈(こうけつ)を将(もっ)て軽沙(けいさ)を染めたり

[競って紅の絞りで軽やかな沙を染めあげている]

 

 

■注目点

何が言いたいのか。

題は海棠の花咲く渓谷。霊卉な海棠を紅纈の軽沙と比較し、言いたいのは海棠。

海棠は異なる霊卉。海棠は神秘的で神々しい。紅纈の軽沙は、紅色の花模様の染め物。

ともに普通とは違い美しいが、美しさは同じではない。

海棠は霊卉。自然が造ったもの。自然の美しさ。軽沙は染め物。人間が造ったもの。人工の美しさ。

女詩人薛濤は、人工の美しさを競う世の人を不満に思い、自然の美しさを思い慕って欲しい。言いたいのはこのことでは。いかにも女らしい詩では。

 

《PN・帰鳥》