山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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洞庭を望み張丞相に贈る

2016.10.14

八月湖水平

涵虚混太清

気蒸雲夢沢

波撼岳陽城

欲済無舟楫

端居恥聖明

坐観垂釣者

空有羨魚情

 

六九八年生まれの孟浩然(もうこうねん)の「洞庭(どうてい)を望み張丞相(ちょうじょうしょう)に贈る」。洞庭は湖。張は姓。丞相は大臣。

 

■読みと解釈

八月湖水平

八月は湖水は平らかにして

[秋八月は洞庭湖の水は穏やかで]

 

涵虚混太清

虚を涵(ひた)して太清に混ず

[天空を浸し天と水が混然となる]

 

気蒸雲夢沢

気は雲夢沢(うんぼうたく)に蒸し

[霞は雲夢沢の沼に立ちこめ]

 

波撼岳陽城

波は岳陽城を撼(うご)かす

[波は岳陽城の街を揺り動かす]

 

欲済無舟楫

済(わた)らんと欲するも舟も楫(かい)も無く

[洞庭湖を渡りたいが舟も楫もない]

 

端居恥聖明

端居(たんきょ)して聖明に恥ず

[聖天子の御代に何もできぬ我が身が恥ずかしい]

 

坐観垂釣者

坐(そぞ)ろに釣を垂るる者を観れば

[何とはなく釣糸を垂れている人を観ると]

 

空有羨魚情

空(むな)しく魚を羨(うらや)む情有り

[甲斐もなく魚が欲しい思いがする]

 

 

■注目点

洞庭湖を望み張大臣に何を贈るのかに注目。

前半4句は洞庭湖の風景。季節は秋。湖水は満々として穏やか。湖水と天空が融合。見分けがつかぬ。天地が一体。辺りには霞と波。霞は雲の夢と言う名の沼に立ちこめ、波は岳の陽の城と言う名の街を揺り動かす。

孟浩然は洞庭湖の風景に、立ちこめ揺り動く、満々たる胸中を託し、張大臣に贈ります。

後半4句は胸中の吐露。洞庭湖を渡る。それは生きること。生きたいが、生きる手立ての舟や楫がない。聖天子の御代なのに、よう生きぬ恥ずかしさ。魚を釣りたいが、釣る手立てを持たず、魚が欲しくて欲しくてならぬ。魚に託して胸中を張大臣に贈ります。

張大臣に登用を懇願する詩。謙遜それとも自嘲。

 

《PN・帰鳥》