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沈子福の江南に之くを送る

2019.04.05

楊柳渡頭行客稀

罟師盪漿向臨圻

唯有相思似春色

江南江北送君帰

 

 七六一年に亡くなった王維(おうい)の「沈子福(しんしふく)の江南(こうなん)に之(ゆ)くを送る」。沈は姓。子福は名。経歴不明。江南は長江南部。

 

読みと解釈

楊柳渡頭行客稀

 楊柳(ようりゅう)の渡頭(ととう)には行客は稀にして

[楊や柳のある舟着き場には旅人は少なく]

 

罟師盪漿向臨圻

 罟師(こし)は漿(かい)を盪(うご)かして臨圻(りんき)に向かう

[漁師が櫂を漕ぎ向こう岸に向かっている]

 

唯有相思似春色

 唯(た)だ相思(そうし)の春色に似たる有りて

[君を思う我が思いは春の景色と似ており]

 

江南江北送君帰

 江南江北 君が帰るを送る

[君が江南江北の何処に帰ろうが変わらない]

 

 

注目点

 題材に注目。この詩の題材は楊柳、渡頭、罟師、相思、春色、江南、江北。これらの題材を用いて、江南へ行く沈子福に対する、作者王維の変わらぬ思いを詠む。

 鍵になる題材は相思と春色。相思は王維の沈子福への思い。相思は人間界の思い。春色は春の景色。春の景色は自然界の眺め。人間界の思いと自然界の眺めが似ている。同じように見える。

 自然界の眺めは全国至る所同じ。所は変わっても、眺めは変わらない。場所に関係なく、何処だろうが春一色。これが自然界の眺め。自然界の眺めと人間界の思いは似ている。王維の沈子福への思いは、何処だろうが変わらぬ。そんな思いで江南へ行く沈子福を見送る王維。

 

《PN・帰鳥》