山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

汴河の曲

2019.09.06

汴水東流無限春

隋家宮闕已成塵

行人莫上長堤望

風起楊花愁殺人

 

七四八年生まれの李益(りえき)の「汴河(べんか)の曲」。汴河は河南省を流れる河。

 

■読みと解釈

汴水東流無限春

汴水(べんすい)は東に流れて限り無き春なるも

[汴河は今も東に流れて見渡す限り春だが]

 

隋家宮闕已成塵

隋家(ずいか)の宮闕(きゅうけつ)は已(すで)に塵と成る

[隋王朝の御殿はとっくに塵と成り跡形もない]

 

行人莫上長堤望

行人(こうじん)は長堤(ちょうてい)に上りて望むこと莫(な)かれ

[道行く人は長い堤防に上がり遠くを眺めてはならぬ]

 

風起楊花愁殺人

風起こりて楊花(ようか)は人を愁殺(しゅうさつ)せん

[春の風が吹いて川柳の綿毛がひどく悲しませるから]

 

 

■注目点

言いたいことに注目。汴水は北方と南方を結ぶ水路。この水路を造ったのは唐の前の隋の煬帝(在位六〇四~六一七)。

一句目と二句目は眼前の景。一句目は自然の風物は無限。二句目は人工の御殿は有限。自然と人工とを対比し詠む。三句目と四句目は道行く人に呼びかける。長い堤防に上がって遠くを眺めるな。眺めると川柳の綿毛がひどく悲しませることになる。

煬帝は作者の李益より約五百年前の帝王。当時の繁栄と現在の衰微、栄枯盛衰を対比し、相反する情を詠む。煬帝の造った水路は食糧や物資を北から南へ、南から北へ運ぶ要路となり、煬帝の歓楽と栄華の象徴となる。堤防に上がると煬帝王を体感することになる。

 

《PN・帰鳥》