山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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江陵の楽しみ

2016.01.15

暫出後園看

見花多憶子

烏鳥双双飛

儂歓今何在

 

三〇〇年頃の作者不詳の「江陵(こうりょう)の楽しみ」。江陵は長江中流域の地名。

 

■読みと解釈

暫出後園看

暫(しばら)く後園(こうえん)に出(い)でて看る

[しばし裏庭に出てじっと見つめています]

 

見花多憶子

花を見るに子(し)を憶(おも)うこと多し

[花を見るや思うのは貴男のことばかり]

 

烏鳥双双飛

烏鳥(うちょう)は双双(そうそう)として飛ぶも

[烏が二羽夫婦で仲よく飛んでいますが]

 

儂歓今何在

儂(わ)が歓(きみ)は今何(いず)くにか在る

[私の貴男は今どこにいらっしゃるの]

 

■注目点

女の思いに注目。

女が裏庭に出る。辺りをじっと見つめる。すると花が見えた。花を見ていると、男を思い出した。思いが溢れるほど、思い出した。忘れようにも、忘れられぬ男です。意中の男。男がいとおしくてならぬ女の情。

裏庭に出た女が、花の次に見たのが烏。一羽ではなく二羽。雄と雌。夫婦です。連れ添い、仲よく飛んでいる。「私のあの人は、今どこにいるの」。一時も早く会いたい。夫婦烏を見た途端、花を見たとき以上に、意中の男を思い出し、いとおしい思いが、強烈になる。

江陵辺りに見える花と烏。二つの自然物を設定し、これに人間の思いを重ねる。江陵人の楽しみだったのでしょうか。

 

《PN・帰鳥》