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江村の即事

2010.11.05

罷釣帰来不繋船
江村月落正堪眠
縦然一夜風吹去
只在蘆花浅水辺

 

作者は七四〇年生まれの司空曙(しくうしょ)。詩の題は「江村の即事」(川辺の村の目の前の事)。

 

■読みと解釈
罷釣帰来不繋船
釣を罷(や)め帰り来たるも船を繋(つな)がず
[釣をやめて帰って来たが船を繋ぎ留めない]

 

江村月落正堪眠
江村に月落ち正(まさ)に眠るに堪(た)えたり
[川辺の村には月が沈みまさに眠るのにもってこいだ]

 

縦然一夜風吹去
縦(たと)い一夜風吹き去るも
[仮に一晩風が吹き(船を)連れ去っても]

 

只在蘆花浅水辺
只(ただ)蘆花(ろか)の浅水に在るのみ
[せいぜい蘆(あし)の花咲く浅瀬辺りだ]

 

 

■注目点
蘆の花が咲くのは秋。川辺の村の秋の夕刻、船を繋がず、船に眠る漁師の心地よさ。作者が漁師になり詠んだ詩。ここに注目。
漁をやめて帰って来た漁師。月も沈み、眠るにいい時刻。安全のために船を繋がなくてはならぬが、繋がず眠ることにした。
しかし、夜のうちに風が吹き、流されたらと心配するが、流されたところで、蘆の花咲く浅瀬辺り。そう決めこむ。
漁師。自然のままの暮らし。人生何の心配もない。作者の羨望かもしれない。

 

《PN・帰鳥》