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江南の春

2013.03.15

千里鴬啼緑映紅
水村山郭酒旗風
南朝四百八十寺
多少楼台煙雨中

 

作者は八〇三年生まれの杜牧(とぼく)。揚子江の南の春を詠んだ「江南の春」。

 

■読みと解釈
千里鴬啼緑映紅
千里鴬啼(な)いて緑 紅(くれない)に映(えい)ず
[千里四方には鴬が啼き柳の緑が桃の紅に照り映え]

 

水村山郭酒旗風
水村 山郭(さんかく)酒旗の風
[水辺の村や山辺の街には酒屋の旗が風に揺れている]

 

南朝四百八十寺
南朝 四百八十寺(しひゃくはっしんじ)
[昔の南朝時代には四百八十もの寺々があり]

 

多少楼台煙雨中
多少の楼台(ろうだい)煙雨の中
[それら多くの寺院は霞のかかった雨の中に煙っている]

 

 

■注目点
揚子江の南の春をどう詠んでいるかに注目。
千里は揚子江の南の広さ。広々している。そこに鴬の鳴き声、柳の緑色、桃の紅色。さらに水があり、山があり、酒屋の旗がある。旗の色は青。聴覚、視覚で、晴れたのどかな揚子江の南を詠みます。
一転して昔の南朝時代へ遡る。南朝時代は仏教が広まり、多くの寺院が建てられた。その寺院が作者の時代には、霞のかかった雨の中に煙っています。
晴れたのどかな景から、雨の降る寺院の景へ。この落差。揚子江の南の景が一変します。ここにこの詩の注目点があるのでしょう。
寺院を詠むことで、移り変わる人の世が感じとられます。

 

《PN・帰鳥》