山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

楊柳の枝

2019.07.05

館娃宮外鄴城西

遠映征帆近払堤

繋得王孫帰意切

不関春艸緑萋萋

 

八一二年生まれの温庭筠(おんていいん)の「楊柳(ようりゅう)の枝」。楊柳はやなぎの総称。

 

■読みと解釈

館娃宮外鄴城西

館娃宮(かんあきゅう)の外も鄴城(ぎょうじょう)の西も

[館娃宮殿の郊外も鄴城の西方も一面楊柳の枝が生えており]

 

遠映征帆近払堤

遠くは征帆(せいはん)に映(は)え近くは堤(どて)を払う

[楊柳の枝は遠くは旅人の乗る舟と照り映え近くは土手をさっと撫でている]

 

繋得王孫帰意切

王孫(おうそん)の帰る意の切なるを繋(つな)ぎ得て

[楊柳の枝は故郷へ帰りたいという貴公子の切なる思いを繋ぎ止めることができて帰らさず]

 

不関春艸緑萋萋

春の艸(くさ)の緑の萋萋(せいせい)たるに関(かか)わらず

[春の草が緑色して生い茂っていることなど関係ない]

 

 

■注目点

楊柳の功に注目。

一句目の館娃宮を建てたのは春秋時代の夫差(ふさ)。鄴城を建てたのは魏の曹操(そうそう)。今はあの時代から遠くなり、共にあの時代の面影はなく、ただ楊柳の枝だけはあの時代と同じく生えている。

三句目の王孫なる貴公子は春の草が生い茂っているのに帰らなかったように、作者温庭筠も楊柳の枝が生えているのに帰らず、繋ぎ止められている。

楊柳の枝は時代を越え、人を繋ぎ止める功がある。不思議な樹である。

 

《PN・帰鳥》