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桑乾を渡る

2013.07.26

 

客舎并州已十霜

帰心日夜憶咸陽

無端更渡桑乾水

卻望并州是故郷

 

七七九年生まれの賈島(かとう)の「桑乾(そうかん)を渡る」。桑乾は北京付近の河。詩中の并州は桑乾より南にある街。咸陽は長安付近の街。

 

■読みと解釈

客舎并州已十霜

并州(へいしゅう)に客舎すること已(すで)に十霜(じっそう)

[并州で宿屋住まいしてはや十年の歳月]

 

帰心日夜憶咸陽

帰心(きしん)日夜咸陽(かんよう)を憶(おも)う

[帰りたい心は昼も夜も咸陽を思うばかり]

 

無端更渡桑乾水

端(はし)無くも更に渡る桑乾の水

[思いがけもなく今また桑乾河を渡ることになった]

 

卻望并州是故郷

卻(かえ)って并州を望めば是(こ)れ故郷ならん

[并州をふり向くと何と故郷ではないか]

 

 

■注目点

桑乾河を渡る作者の心情に注目。

作者は今、十年暮らした并州を離れ、舟に乗って桑乾河を渡り、別の地に行こうとしている。

并州の十年は宿屋暮らし。故郷の暮らしではない。十年間、都会の咸陽に帰りたい。昼も夜もそう思い続けてきた。

なのに意に反して、咸陽には帰れず、別の地へ。桑乾河を渡りながら、先ほど離れた并州をふり返る。すると何と、十年暮らした并州が、わが故郷に思われた。

作者にとって并州は不遇な地だったのでは。なのに住めば都。并州が第二の故郷。

作者の賈島は桑乾河を渡りながら、ままならぬ人生をふり返り、人間の心理をえぐる。

 

《PN・帰鳥》