山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

東陽の谿の中にて贈る

2015.05.22

可憐誰家婦

縁流洗素足

明月在雲間

迢迢不可得

 

三八五年生まれの謝霊運(しゃれいうん)の「東陽(とうよう)の谿(たに)の中にて贈る」。東陽は揚子江下流の地。谿は谷川。

 

■読みと解釈

可憐誰家婦

憐(あわれ)むべし誰(た)が家の婦(つま)ぞ

[美しく優しいのはどなたの人妻]

 

縁流洗素足

流れに縁(よ)りて素足(そそく)を洗う

[流れに沿って白い足を洗っている]

 

明月在雲間

明月は雲間(うんかん)に在り

[明月は雲間に隠れて顔を出さず]

 

迢迢不可得

迢迢(ちょうちょう)として得(う)べからず

[遥か遠くてとてもとても手が届かぬ]

 

 

■注目点

人妻への男の思いに注目。

ある男が谷川にいる人妻を発見する。もの影から人妻を見つめる男。人妻は谷川へ降り、流れに足を浸した。見るとまっ白な足。男心を誘う、異様で官能的な美しさ。男は引きこまれ、心を奪われる。

その男が谷川で明月を発見する。雲間に隠れ、姿を現さない。明月までの距離は遠い。とてもとても男の手には届かぬ。

届かぬのは明月だけではない。まっ白な足を洗っている人妻も、男の手には届かぬ。

優しく美しい人妻よ。まっ白な足を洗い終え、私の所へ来て欲しい。

男からこの詩を贈られた人妻。どんな思いで読んだのだろう。喜怒哀楽のどれだろう。

 

《PN・帰鳥》