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杜某が蜀の地へ赴任する

2016.07.08

城闕輔三秦

風煙望五津

与君離別意

同是宦遊人

海内存知己

天涯若比鄰

無為在岐路

児女共霑巾

 

六五〇年頃生まれの王勃(おうぼつ)の「杜某が蜀(しょく)の地へ赴任する」詩。蜀は中国西部の辺地。

 

■読みと解釈

城闕輔三秦

城闕(じょうけつ)は三秦に輔せられ

[首都長安は秦の三人の将軍の地に守られ]

 

風煙望五津

風煙(ふうえん)は五津(ごしん)を望む

[風に漂う靄は五つの渡し場を眺めやる]

 

与君離別意

君と離別するの意

[君と別れる心中は]

 

同是宦遊人

同(とも)に是れ宦遊(かんゆう)の人

[二人とも各地を転々とする役人]

 

海内存知己

海内に知己(ちき)存すれば

[天下に心の友が存在すれば]

 

天涯若比鄰

天涯も比鄰(ひりん)の若(ごと)し

[天の果てとて隣近所と変わらぬ]

 

無為在岐路

為(な)す無けん岐路に在りて

[止めよう 別れにあたって]

 

児女共霑巾

児女のごとく共に巾(きん)を霑(うるお)すは

[子供のように二人して涙でハンカチを濡らすことは]

 

■注目点

役人と別れる役人の心に注目。

二人は紙一枚で転勤を命ぜられ、各地を転々とする小役人。

大昔から軍力で死守されたのが首都長安。杜某が転勤を命ぜられた蜀の地は不安定。長安から五つも渡し場を越えなくてはならぬ。

王勃は杜某と別れるにあたり、蜀の方角を眺めやる。靄が風に漂うている。王勃の心は切ない。やるせない。

不安定な地への転勤。明日は我が身。人ごとではない。ならば二人が会えるのも、今日が最後かも。

思えば二人は心の友。心の友ならば、この広い広い天下。たとえ天の果てとて、心の距離は隣近所。オーイと呼べば、オーイと応える。

子供のようにメソメソすまい。涙を流すなんて止めよう。心の友。

紙一枚で転勤させられる小役人。転勤も別れも辛い。だが心の友、心が変わらねば、辛さは堪えられる。そんな詩。

 

《PN・帰鳥》