山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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暁角を聴く

2017.10.06

辺霜昨夜堕関楡

吹角当城片月孤

無限塞鴻飛不度

秋風巻入小単于

 

七四八年生まれの李益(りえき)の「暁角(ぎょうかく)を聴く」。暁角は軍隊で夜明けの時刻を知らせるために吹く獣の骨で作った笛。吹くのは外敵匈奴(きょうど)の大将の小単于(しょうぜんう)。

 

■読みと解釈

辺霜昨夜堕関楡

辺霜(へんそう)は昨夜 関楡(かんゆ)に堕(お)ち

[辺塞に降りた霜が昨夜関所の楡(にれ)の木に落ち]

 

吹角当城片月孤

角(かく)を吹けば城に当たり片月(へんげつ)は孤なり

[角笛を吹くと城壁に当たり弓張り月が一つ]

 

無限塞鴻飛不度

無限の塞鴻(さいこう)は飛び度(わた)らず

[無数の辺塞の鴻雁は南方へ渡らぬ]

 

秋風巻入小単于

秋風は巻きて小単于に入る

[秋風は小単于を巻きこんで吹いている]

 

 

■注目点

題材に注目。

前半二句の題材は辺霜、夜、関楡、角、城、片月。後半二句は塞鴻、秋風、小単于。

具体的には辺塞という国境地帯、楡で覆われた関所、辺塞で吹かれる角笛、空に掛かる弓張り月、渡らぬ無数の鴻雁、物思いに沈ませる秋風、外敵匈奴の大将小単于。

小単于の吹く角笛に堪えられぬのは人間だけではない。鴻雁も。飛び立つ時節なのに飛び立たぬ。自軍の兵士を鼓舞する角笛が、敵軍の兵士や辺塞の鳥をも悲しませ鈍らせる。

感情語を一語も使わず、題材だけ詠む。

 

《PN・帰鳥》