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春望

2016.06.24

国破山河在
城春草木深
感時花濺涙
恨別鳥驚心
烽火連三月
家書抵万金
白頭掻更短
渾欲不勝簪

 

七一二年生まれの杜甫(とほ)の「春望」。春の望(なが)め。

 

■読みと解釈
国破山河在
国破れて山河在り
[国は壊れ山や河は壊れず存在し]

 

城春草木深
城春にして草木深し
[都は春になり草や木が生い茂っている]

 

感時花濺涙
時に感じては花にも涙を濺(そそ)ぎ
[時勢を思うては咲く花にも涙をこぼし]

 

恨別鳥驚心
別れを恨(うら)みては鳥にも心を驚かす
[別離を悔やんでは鳴く鳥にも心が乱れ騒ぐ]

 

烽火連三月
烽火(ほうか)三月に連なり
[戦いののろしは何か月も続き]

 

家書抵万金
家書万金(ばんきん)に抵(あ)たる
[家族からの手紙は大金に相当する]

 

白頭掻更短
白頭掻(か)けば更に短く
[白髪は掻けば掻くほど薄くなり]

 

渾欲不勝簪
渾(す)べて簪(しん)に勝(た)えざらんと欲す
[もはや冠を留める簪がさせそうにない]

 

■注目点
視点の移動に注目。
八句からなる本詩。視点は順に、国家→首都→時勢→別離→戦乱→家族→白髪→冠簪と移動する。人事と自然を対比する。自然が山河→草木→花→鳥へと次第に狭小化されるにつれ、人事も国家→時勢→家族→冠簪へと次第に微小化される。この大から小への視点の移動は、主題と関わる。

国家の破滅→首都の春景→時勢への落涙→別離への悔恨→戦乱の連続→家族の様子→白髪の短小→冠簪の不要。

国家の破滅、時勢への落涙、別離への悔恨、家族の様子→白髪の短小→冠簪の不要は全て戦乱の連続が原因。
15万の反乱軍で首都長安陥落。70歳の皇帝玄宗は長安を脱出。道連れの楊貴妃36歳は自害。杜甫の家族は北方の地へ疎開。46歳の杜甫は長安に監禁。
春の季節、杜甫は自然と人事を望める。望め得たものは戦乱。戦乱は国家も家族も自分も全て破滅する。戦乱を憎悪する作である。
《PN・帰鳥》