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春の風を詠む

2015.03.20

可聞不可見

能重復能軽

鏡前飄落粉

琴上響余声

 

四六七年頃生まれの何遜(かそん)の「春の風を詠む」。

 

■読みと解釈

可聞不可見

聞くべし 見るべからず

[耳に感じるもの 目に見えるものではない]

 

能重復能軽

能(しか)して重し復(ま)た能して軽し

[強く吹いたり 弱く吹いたりする]

 

鏡前飄落粉

鏡の前に落粉(らくふん)飄(ひるがえ)り

[鏡の前では白粉が散って風にただよい]

 

琴上響余声

琴の上に余声(よせい)響く

[琴の上では余韻が風に乗り響いている]

 

 

■注目点

春の風の詠み方に注目。

聞くべしとは、春の風は自然に耳に入ってくるもの。見るべからずとは、春の風は自然に目に入ってくるものではない。春の風は聴覚で感じるもので、視覚で確かめるものではない。

能して重しとは、そして春の風は重い。能して軽しとは、そして春の風は軽い。春の風は重くも軽くもある。

鏡の前にいるのは女性。化粧中。白粉を顔に塗る。そこへ春の風。塗った白粉が落ち、風に乗り辺りにただよう。

琴を弾いているのも女性。琴は女性の慰み。喜怒哀楽の情を琴に乗せ弾く。そこへ春の風。弾いた余韻が響き、風に乗り辺りにただよう。

前の二句は春の風を正面から客観的に詠み、後の二句は物に託して主観的に詠む。巧みな手法です。

 

《PN・帰鳥》