山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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春の興き

2018.08.03

楊柳陰陰細雨晴

残花落尽見流鴬

春風一夜吹香夢

夢逐春風到洛城

 

七五八年生まれの武元衡(ぶげんこう)の「春の興(おもむ)き」。

 

■読みと解釈

楊柳陰陰細雨晴

楊柳(ようりゅう)は陰陰(いんいん)とし細雨は晴れたり

[楊柳は茂ってうす暗くそぼ降る雨は晴れている]

 

残花落尽見流鴬

残花(ざんか)は落ち尽(つ)くし流鴬(りゅうおう)を見る

[散り残った花は消え失せ木渡りする鴬が見える]

 

春風一夜吹香夢

春風は一夜 香夢(こうむ)を吹き

[春の風はひと晩のうちに香り良き夢を吹き飛ばし]

 

夢逐春風到洛城

夢は春風を逐(お)い洛城に到れり

[香り良き夢は春の風を追いかけ洛陽の街に行き着いた]

 

 

■注目点

春の興きに注目。

起句の興きは楊柳と細雨。承句は残花と流鴬。転句は春風と香夢。結句は夢と春風と洛城。

これらの題材で、春の興きを詠む。その興きは古里洛陽に帰った興きである。題材として有効なのは、反復語の夢と春風であろう。夢が春風を追う。追っているうちに何時の間にか古里洛陽に帰った。

古里洛陽に帰ったのは夢だが、現の身も心も帰った。春風が古里洛陽に連れ帰ってくれた。帰ったのは歓喜して帰ったのか。傷心して帰ったのか。詩全体からすると、傷心だったのではないか。そう想像するが、どうだろう。洛陽は当時の副都。

 

《PN・帰鳥》