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春の夕べに酔いが醒める

2015.11.27

四弦纔罷酔蛮奴

酃醁余香在翠炉

夜半醒来紅蝋短

一枝寒涙作珊瑚

 

八三三年頃生まれの皮日休(ひじつきゅう)の「春の夕べに酔いが醒める」。

 

■読みと解釈

四弦纔罷酔蛮奴

四弦は纔(わずか)に罷(や)むも蛮奴(ばんど)は酔えり

[琵琶は今しがた終わったが下女は酔っている]

 

酃醁余香在翠炉

酃(れい)の醁(さけ)の余香は翠炉(すいろ)に在り

[銘酒の残り香は萌黄色の翠の香炉に一杯]

 

夜半醒来紅蝋短

夜半に醒め来たれば紅蝋(こうろう)は短く

[夜中に酔いが醒めると紅色の蝋燭は短く]

 

一枝寒涙作珊瑚

一枝の寒涙(かんるい)は珊瑚(さんご)と作(な)る

[ひと筋の冷たい涙はひと枝の珊瑚となった]

 

■注目点

主人公に注目。

この詩の主人公は蛮奴。蛮奴とは野蛮な奴。軽蔑語。今は下女と訳したが、召し使い女。

この下女は四弦の琵琶を弾き、歌を歌い、舞を舞い、男の相手をする、遊び女だろう。

この下女が銘酒の産地酃の酒を飲んだ。芳醇な香が辺り一面に広がる。

夜中に酔いが醒めた下女。見渡すと、蝋燭が短い。酔ったのは昨夕。長い時間寝ていたとは。下女は驚き、我に返る。失態はなかったか。

すると冷たい涙がひと筋。流れた途端、ひと枝の珊瑚に変質。下女だが女。女の涙に変質したのです。

下女が主人公とは。酔っ払い女から普通の女へ。変質の面白さ。

 

《PN・帰鳥》