山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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春に左省に宿す

2017.01.27

花隠掖垣暮

啾啾棲鳥過

星臨万戸動

月傍九霄多

不寝聴金鑰

因風想玉珂

明朝有封事

数問夜如何

 

七一二年生まれの杜甫の「春に左省(さしょう)に宿す」。左省は役所の名。

 

■読みと解釈

花隠掖垣暮

花は隠れ掖垣(えきえん)は暮れ

[花はぼんやりし役所は夕暮れとなり]

 

啾啾棲鳥過

啾啾(しゅうしゅう)として棲鳥(せいちょう)は過ぐ

[塒に帰る鳥が鳴きながら通り過ぎる]

 

星臨万戸動

星は万戸に臨みて動き

[星は宮殿の千万の建物に向き光り輝き]

 

月傍九霄多

月は九霄(きゅうしょう)に傍(そ)いて多し

[月は宮殿に寄り添い満ち溢れている]

 

不寝聴金鑰

寝ずして金鑰(きんやく)を聴き

[一睡もせず役所の門を開ける金の鍵音に耳を傾け]

 

因風想玉珂

風に因(よ)りて玉珂(ぎょくか)を想う

[風に揺れ馬の玉飾りが鳴る音で誰か参内したのではと想う]

 

明朝有封事

明朝には封事(ふうじ)有り

[夜が明けると天子に上奏文を奉る任があり]

 

数問夜如何

数(しば)しば問う夜は如何(いかん)と

[今は夜の何時なのか度々聞く始末]

 

 

■注目点

役所に宿直する杜甫の気遣いに注目。

左省は天子の上奏文を司る役所で、天子の住む宮殿の傍にある。

重要な任ある役所で宿直する杜甫。床に就くが、夜明けが気になる杜甫。夜が明けるや、上奏文を奉らねばならぬ杜甫。

夕暮れ床に就いた杜甫。花や鳥、星や月に目をやる。花はぼんやり。見えない。塒に帰る鳥。声はする。姿は見えない。星も月も宮殿全体に光り輝く。輝きは見える。星、月は見えない。

夕暮れ床に就いた杜甫。音に耳をやる。役所の門を開ける金の鍵音。風で鳴る馬の玉飾りの音。二つの音は、宮殿参内の一番乗り。

上奏文を奉らねばならぬ杜甫。一番乗りより先に、一番乗りにならねばならぬ。一睡もせず、時間ばかり気になる杜甫。

一睡もせず任を果たす。律儀一筋の杜甫。これが杜甫。

 

《PN・帰鳥》