山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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易水にて人を送る

2013.11.15

此地別燕丹

壮士髪衝冠

昔時人已没

今日水猶寒

 

六四〇年ごろ生まれの駱賓王(らくひんのう)の「易水(えきすい)にて人を送る」。易水は河北省の川。人は荊軻(けいか)。送る主語は燕(えん)国の丹(たん)。

 

■読みと解釈

此地別燕丹

此の地にて燕の丹に別るるに

[この地(易水)で燕の丹と別れるとき]

 

壮士髪衝冠

壮士(そうし)髪は冠を衝(つ)く

[意気盛んな勇士は頭髪は冠を衝き上げる]

 

昔時人已没

昔時(せきじ)人は已(すで)に没せしに

[昔々(壮士なる)荊軻は死んでしまったが]

 

今日水猶寒

今日(こんにち)水は猶(な)お寒し

[今日この日易水はやはり寒く冷たい]

 

 

■注目点

送られる人(荊軻)に注目。

易水で燕国の丹が荊軻を送る詩だが、丹と荊軻はどんな関係?

かつて秦の人質となった丹は、秦王の扱いに不満を持ち、復讐したく壮士を捜していた時、暗殺者の荊軻を知り、秦王暗殺を依頼する。

依頼を承諾した荊軻。丹が易水で見送る。作者の時代から約九百年前の出来事です。

暗殺者で壮士の荊軻は、秦王暗殺のために丹と別れる。「風はピューピュー、易水は冷たい。壮士はいったん去れば、もどることはない」と言い残して。まさに怒髪天を衝く勢い。

その荊軻は今はいないが、易水は昔のまま冷たい。水の冷たさは荊軻の冷たさであり、作者の冷たさである。

実は荊軻。秦王暗殺に失敗。作者は荊軻の心中を推し量る。

 

《PN・帰鳥》