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慈恩塔に題す

2011.09.23

漢国山河在
秦陵草樹深
暮雲千里色
無処不傷心

 

唐の人と言われる荊叔(けいしゅく)の「慈恩塔(じおんとう)に題す」。慈恩塔は唐の首都長安にあった、七階建ての仏塔。大雁塔とも言う。題すは書きつける。

 

■読みと解釈
漢国山河在
漢の国は山河在り
[漢の国は山と河が存在し]

 

秦陵草樹深
秦(しん)の陵(りょう)は草樹深し
[秦の墓は草や樹が深く茂っている]

 

暮雲千里色
暮雲(ぼうん)は千里の色
[夕暮れの雲が千里四方たなびき]

 

無処不傷心
処(ところ)として心を痛(いた)めざるは無し
[至るところ心を傷つけないことはない]

 

 

■注目点
慈恩塔から見た風景の詩を、仏塔に書きつけた意図に注目。
作者は眼前の風景を詠むのに、漢、秦に注目する。漢の国は紀元前二〇六年に起こって約四百年続き、秦の国は紀元前二二一年に起こって十四年で滅んだ。
作者の世からすれば、千年近くも前の事。作者の眼前にあるのは、山と河と草と樹。漢、秦の隆盛を偲ばせる面影は、何一つない。
千里四方にたなびく夕暮れの雲。漢、秦と今を結ぶこの風景もまた、隆盛を偲ばせる物ではない。
眼前にある風景。すべて心が痛むのです。この心境。荊叔の世も漢、秦同様、隆盛ではない。それが言いたいのでは。この詩を書きつけた所が仏塔です。

 

《PN・帰鳥》