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怨みの情

2016.06.10

美人捲珠簾
深坐顰蛾眉
但見涙痕湿
不知心恨誰

 

七〇一年生まれの李白(りはく)の「怨みの情」。

 

■読みと解釈
美人捲珠簾
美人は珠簾(しゅれん)を捲(ま)き
[美人は真珠の簾を巻き上げ]

 

深坐顰蛾眉
深く坐して蛾眉(がび)を顰(ひそ)む
[部屋の奥深く座り眉にしわを寄せている]

 

但見涙痕湿
但(た)だ涙痕(るいこん)の湿(うるお)うを見るのみ
[ただ涙の跡が濡れているのが見えるだけ]

 

不知心恨誰
知らず 心に誰をか恨(うら)むを
[心の中で誰を恨んでいるのかしら]

 

■注目点
誰の誰に対する怨みの情なのかに注目。
この詩の主人公は美人。美人は宮女。とすると、怨みの対象は天子。寵愛を受けるべき宮女が寵愛されない。寵愛されぬ怨みの情を詠む。

相手が天子であるが故に、怨みの情はあからさまには出さない。天子への怨みの情は山ほどあるが、不平不満は吐き出さない。真珠の簾を巻き上げる。部屋の奥深く座る。美しい眉にしわを寄せる。乾くことなく涙を流す。せいぜいこの程度。これが寵愛されぬ宮女の怨みの情の発露だったのでしょう。

この詩は特定の天子への怨みを詠んだのではなく、寵愛されぬ一般的な宮女の怨みを詠んだのでしょうか。宮女に対する李白の思いは切な過ぎる。抑えに抑えた宮女の、やるせない思い。

 

《PN・帰鳥》