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従軍の行

2015.06.05

烽火城西百尺楼

黄昏独上海風秋

更吹羌笛関山月

無那金閨万里愁

 

七〇〇年頃生まれの王昌齢(おうしょうれい)の「従軍の行(うた)」。

 

■読みと解釈

烽火城西百尺楼

烽火城(ほうかじょう)の西には百尺の楼

[烽火(のろし)を上げる城塞の西側の高い高い物見櫓]

 

黄昏独上海風秋

黄昏(こうこん)に独り上れば海風の秋

[たそがれ時独り物見櫓に上ると湖面を渡る秋風が吹き寄せる]

 

更吹羌笛関山月

更に羌笛(きょうてき)を吹くは関山月(かんざんげつ)

[加えて外敵が関山月の別れの曲を笛吹いており]

 

無那金閨万里愁

金閨(きんけい)万里の愁いを那(いか)んともする無し

[その曲を聞くと万里彼方の妻を思う愁いは如何ともし難い]

 

 

■注目点

従軍兵の心情に注目。

従軍兵は外敵と戦う最前線にいる。物見櫓に独り上り、外敵の襲来を知らせる烽火係。任務は敵情視察。国運を賭けた責務は重大。

物見櫓にいる従軍兵。外敵の吹く別れの曲を耳にする。曲を耳にする従軍兵は、わが身に思いをいたすとともに、遠く遠く離れた家族、とりわけ留守居を守る妻に思いをいたす。妻への思いは愁いの情となり、抑えようにも抑えられない。

責務重大なる従軍兵が、抑え難い妻への情を詠む。だらしない、と言えばだらしない。だが従軍兵といえども人間。従軍兵の偽らざる心情の吐露。人間的である。

 

《PN・帰鳥》