山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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建徳江に宿る

2013.12.13

移舟泊煙渚

日暮客愁新

野曠天低樹

江清月近人

 

六八九年生まれの孟浩然(もうこうねん)の「建徳江(けんとくこう)に宿る」。建徳江は南方の浙江(せっこう)省を流れる川。

 

■読みと解釈

移舟泊煙渚

舟を移して煙渚(えんしょ)に泊まり

[小舟を動かしてもやのかかる中洲に宿泊し]

 

日暮客愁新

日暮れに客愁(かくしゅう)は新たなり

[日暮れになると旅の愁いが新たに生じる]

 

野曠天低樹

野は曠(ひろ)くして天は樹に低(た)れ

[野は果てしなく広がり天は樹木に垂れこめ]

 

江清月近人

江(かわ)は清くして月は人に近し

[川は澄んだ水をたたえて流れ月は人の近くにいる]

 

 

■注目点

新たに生じた愁いに注目。どんな愁い?

作者は旅の最中にあり、新たに愁いが生じたのです。新たな愁い。

今夜の宿は宿屋ではなく、建徳江に浮かぶ小舟。小舟をつなぐ所は中洲。中洲にはもやがかかっている。時刻は日が西に沈む日暮れ。これが新たな愁いか。

果てしなく広がる野。家も人も見えない野。これが新たな愁いか。

天が樹木を覆い隠す。樹木が天に包みこまれる。これが新たな愁いか。

澄んだ水をたたえ流れる川。行き来する舟もない川。これが新たな愁いか。

月が人を覆い隠す。人が月に包みこまれる。これが新たな愁いか。

天が樹木を包みこむ。月が人を包みこむ。この発想は尋常ではない。

 

《PN・帰鳥》