山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

常娥

2014.06.20

雲母屏風燭影深

長河漸落暁星沈

常娥応悔偸霊薬

碧海青天夜夜心

 

八一三年生まれの李商隠(りしょういん)の「常娥(じょうが)」。常娥は夫の不死の薬を盗み飲み、月へ逃げこんだ女。

 

■読みと解釈

雲母屏風燭影深

雲母(うんも)の屏風(びょうぶ)には燭(ともしび)の影は深く

[雲母を一面に飾った屏風には灯火の陰影が深く映り]

 

長河漸落暁星沈

長河は漸(ようや)く落ち暁星(ぎょうせい)も沈む

[天の河は次第に姿を消し明けの星も見えなくなる]

 

常娥応悔偸霊薬

常娥は応(まさ)に霊薬を偸(ぬす)みしを悔(く)ゆべし

[常娥は不死の薬を盗んだことを悔やんでいるに違いない]

 

碧海青天夜夜心

碧海(へきかい)に青天 夜夜の心

[青々した海原に青々した天空これが常娥の夜ごとの心]

 

 

■注目点

夫の不死の薬を盗み飲んだ常娥の心に注目。

1句目と2句目は、夫と離れ独り月にいる常娥の暮らしぶり。

豪華な部屋。彦星と織姫の天の河。夫を思い独り眠られぬ夜。孤独をかみしめる常娥。

3句目は不死の薬を盗んだ後悔。盗んだばかりに夫と離れ独り暮らし。後悔しきり。

4句目は濁った夫の世界とは異なり、常娥のいる月は澄み切った世界。それだけに常娥の心は辛く寂しい。

罪を犯し夫と離れ、独り寂しく暮らす女の悲しみ。この詩の主題はここにある。

 

《PN・帰鳥》