山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

帰る雁

2015.10.16

瀟湘何事等間回

水碧沙明両岸苔

二十五弦弾夜月

不勝清怨卻飛来

 

七二二年生まれの銭起(せんき)の「帰る雁」。

 

■読みと解釈

瀟湘何事等間回

瀟湘(しょうしょう)より何事ぞ等間(とうかん)に回(かえ)る

[瀟水、湘水から考えもせず北へ回るとはどういう事か]

 

水碧沙明両岸苔

水は碧(あお)く沙(すな)は明るく両岸は苔(こけ)むせり

[水は紺碧で沙は透明で両岸には緑の苔が生えている]

 

二十五弦弾夜月

二十五弦をば夜月(やげつ)に弾けば

[二十五弦の琴を春の月が出る夜中に弾くと]

 

不勝清怨卻飛来

清怨(せいえん)に勝(た)えずして卻(かえ)って飛来せり

[清々しい音色に耐えられず北へ何と飛んで行ったのだ]

 

■注目点

雁の動きに注目。

雁は渡り鳥。秋に南に来て、翌年の春に北へ帰る。この詩の雁は南から北へ帰る雁。

瀟水、湘水はともに洞庭湖に注ぐ南方の川。この川の水は紺碧、沙は透明、岸には緑の苔。風光明媚なこの地なのに、雁は考えることなく、この地を捨て北へ帰るとは。なぜ帰るのか。帰るな。ここに留まれ。

なぜ北へ帰る。そのわけを銭起は発見。琴の音色のせい。春の夜中に琴を弾く輩。それは仙女。仙女の琴の音色は怨みもこもり、悲しく清らか。

琴の音色を聞いた雁。考えることは何もない。風光明媚とはいえ、この地を去って北へ帰る。これが雁の動き。

 

《PN・帰鳥》