山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

岳陽の晩景

2016.09.16

晩景寒鴉集

秋風旅雁帰

水光浮日去

霞彩映江飛

洲白蘆花吐

園紅柿葉稀

長沙卑湿地

九月未成衣

 

六九一年生まれの張均(ちょうきん)の「岳陽(がくよう)の晩景」。岳陽は長江中流域の街。晩景は夕暮れの景色。

 

■読みと解釈

晩景寒鴉集

晩景に寒鴉(かんあ)集まり

[夕暮れの景の中冬の鴉(からす)は集まり]

 

秋風旅雁帰

秋風に旅雁(りょがん)帰る

[秋風の吹く中旅の雁は帰ってくる]

 

水光浮日去

水光(すいこう)は日を浮かべて去り

[輝く水は日を浮かべて流れ去り]

 

霞彩映江飛

霞彩(かさい)は江(こう)に映りて飛ぶ

[彩られた霞は川に照り映えて飛ぶ]

 

洲白蘆花吐

洲(す)の白きは蘆(あし)の花の吐き

[中洲が白いのは蘆の花が咲いているから]

 

園紅柿葉稀

園の紅(くれない)は柿の葉の稀(まれ)

[庭が紅なのは柿の葉がまばらだから]

 

長沙卑湿地

長沙(ちょうさ)は卑湿(ひしつ)の地にして

[長沙の地は低地で湿気が多く]

 

九月未成衣

九月なるも未(いま)だ衣を成さず

[九月なのにまだ衣服ができ上がっていない]

 

 

■注目点

夕暮れの描写に注目。

季節は秋。時刻は夕暮れ。時は九月。

秋の季節の夕暮れには、冬の鴉が集まる。陰暦九月は晩秋。まだ冬ではないが、鴉が塒を求め集まる。晩秋の風が吹く中、旅に出ていた雁が、北から南の岳陽へ帰ってくる。鴉も雁も冬の準備。

晩秋の夕暮れ時の水面は、薄い夕日を浮かべて川下へ。彩られた夕焼け雲は、長江に照り映え四方へ。

蘆の白い花が咲き誇り、ために長江の中洲はまっ白。柿の赤い葉がまばらになり、ために岸辺の庭はまっ赤。

岳陽のある長沙一帯は、低地で湿地。住むには適さぬ。晩秋の九月なのに、まだ冬支度ができていない。

岳陽の秋の夕暮れ。寒々としている。作者は岳陽から離れたい。寒くない地へ移りたい。そう思っているのでは。作者は左遷の身か。

 

《PN・帰鳥》