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山間の秋夜

2012.09.21

夜色秋光共一闌
飽収風露入脾肝
虚檐立尽梧桐影
絡緯数声山月寒

 

作者は真山民(しんさんみん)。宋(一二七九年滅ぶ)の末の人らしいが、生年も没年も経歴も不明。詩の題は「山間の秋夜」(山の中の秋の夜)。

 

■読みと解釈
夜色秋光共一闌
夜色 秋光は一闌(いちらん)を共にし
[夜の気配と秋のきざしが欄干に集まり]

 

飽収風露入脾肝
飽(あ)くまで風露を収めて脾肝(ひかん)に入る
[飽きるまで風や露を内臓に収めこむ]

 

虚檐立尽梧桐影
虚檐(きょえん)は梧桐(ごどう)の影に立ち尽くし
[高い軒は青桐でできた影に立ち続けており]

 

絡緯数声山月寒
絡緯(らくい)は数声し山月は寒し
[こおろぎが数回鳴き山にかかる月は寒々する]

 

 

■注目点
作者は今どこにいるのか。これが注目点。青桐でできた影に立つ軒。場所は山の中。そこにいるのです。
青桐と言えば、秋の到来を知らせる樹です。その影に立つ軒で、秋のきざし、秋の夜の気配を感じ、秋の風、秋の露を脾臓、肝臓いっぱい貯めこむのです。内臓に貯めこむ。陳腐な表現ではありません。
この静寂な山の中でかなりの時が経つ。辺りでこおろぎが鳴き始める。空にかかる秋の月が冷え冷えする。
作者は山の中に軒を設定し、そこで山の中の秋の夜を詠みます。傑作は「脾肝に入る」ではないでしょうか。なかなかです。

 

《PN・帰鳥》