山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

山房の春の事

2015.01.09

梁園日暮乱飛鴉

極目蕭条三両家

庭樹不知人死尽

春来還発旧時花

 

七一五年生まれの岑参(しんじん)の「山房(さんぼう)の春の事」。山房は山の別荘。

 

■読みと解釈

梁園日暮乱飛鴉

梁園(りょうえん)は日暮れて飛鴉(ひあ)は乱る

[梁園は日が暮れて鴉(からす)が飛び乱れている]

 

極目蕭条三両家

目を極むれば蕭条(しょうじょう)たり三両の家

[遠く見渡すともの寂しくも家が二、三軒]

 

庭樹不知人死尽

庭の樹は人の死し尽きたるを知らざるも

[庭の樹は人が死んでしまったのも知らぬが]

 

春来還発旧時花

春来たれば還(ま)た発(ひら)く旧時の花

[春が来るとまたまた昔の花が咲くのだ]

 

 

■注目点

山の別荘のどんな事を詠むのかに注目。

梁園は岑参より九百年前の漢の孝王が建てた豪華な別荘。

季節は春の日暮れ。

別荘には鴉が乱れ飛んでいる。俺が主と言わんばかりに、カアカア声を揚げ鳴いている。不気味な情景です。

別荘の豪華さはなく、みすぼらしく貧弱な家が二、三軒。不気味な情景です。

別荘には九百年前の樹があるが、その樹は別荘の主や無数の家来が、一人残らず死んでしまった事は承知しない。無常な情景です。

季節は巡り経て、別荘には今年も九百年前と同じ春の花が咲いている。有情な情景です。

人事は有限。自然は無限。古今東西の真理です。

 

《PN・帰鳥》