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宿屋で予期せず雨に遇う

2014.02.07

月華星彩坐来収

岳色江声暗結愁

半夜灯前十年事

一時和雨到心頭

 

八四六年生まれの杜荀鶴(とじゅんかく)の「宿屋で予期せず雨に遇う」。

 

■読みと解釈

月華星彩坐来収

月の華(はな)も星の彩(いろどり)も坐来(ざらい)収まり

[月の光も星の模様も何もしないのに縮んでしまい]

 

岳色江声暗結愁

岳(やま)の色も江(かわ)の声も暗(あん)に愁いを結ぶ

[山の色も川の音も人知れず愁いで一杯]

 

半夜灯前十年事

半夜の灯(ともしび)の前 十年の事

[夜中の明かりの前で十年昔の事を思うと]

 

一時和雨到心頭

一時に雨に和し心頭(しんとう)に到る

[一気に雨とごっちゃになり心中に蘇る]

 

 

■注目点

宿屋で予期せず遇った雨の効果に注目。

作者は宿屋にいる。月も星も見えるが、縮んで見える。山も川もあるが、愁いている。静かにして寂しい光景。仲間はいない一人旅。

静かにして寂しい光景も手伝い、眠れぬ作者は明かりを灯す。明かりを前にしていると、ふと十年前の出来事を思い出した。走馬灯のように果てしない。

外はにわかに雨。十年間の出来事と、雨とが一緒になり、十年間の出来事は雨でずぶ濡れ。ずぶ濡れになった出来事が、心の中に蘇る。心の中に蘇ったずぶ濡れの十年間の出来事。乾かないと外へは出られず、心の中に入ったまま。

予期せず遇った雨と十年間の出来事。巧みな組み合わせ。

 

《PN・帰鳥》