山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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孫山人に寄す

2018.04.20

新林二月孤舟還

水満清江花満山

借問故園隠君子

時時来往往人間

 

七〇七年生まれの儲光羲(ちょこうぎ)の「孫山人(そんさんじん)に寄す」。孫は姓。山人は世捨て人。儲光羲と孫山人は同郷。

 

■読みと解釈

新林二月孤舟還

新林(しんりん)の二月に孤舟(こしゅう)還(かえ)れり

[新林湾の仲春二月に一艘の小舟が戻って来た]

 

水満清江花満山

水は清江(せいこう)に満ち花は山に満つ

[清らかな長江の水は満ち溢れ山々には花が咲き誇る]

 

借問故園隠君子

借問(しゃもん)す故園(こえん)の隠君子(いんくんし)は

[ちょっと尋ねてみたい同郷の隠君子なる孫山人は]

 

時時来往往人間

時時(じじ)来往(らいおう)して人間(じんかん)に往むかと

[しょっちゅう行き来してこの世俗に住んでいるのかと]

 

 

■注目点

孫山人の居所に注目。

新林湾は長江下流域の湾で、同郷の儲光羲と孫山人は承知の湾。

この湾に小舟に乗り戻って来たのは孫山人。時あたかも仲春二月。長江の水は澄み切っており、花は咲き誇っている。春真っ盛りの中、世捨て人の孫が、俗世間の古里へ戻って来た。

儲光羲は声を細め鄭重に聞く「隠君子の孫様、しょっちゅう古里へお帰りなの?」と。

古里は俗世間。俗世間は隠君子の住む所ではない。隠君子らしくない同郷の孫山人を、儲光羲は責め訝る。同郷ゆえの、戯れの作かも知れぬ。

 

《PN・帰鳥》