山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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孟叔を悼む

2015.10.30

曲江院裏題名処

十九人中最少年

今日春光君不見

杏花零落寺門前

 

七六八年生まれの張籍(ちょうせき)の「孟叔(もうしゅく)を悼む」。

 

■読みと解釈

曲江院裏題名処

曲江(きょくこう)の院の裏(うち)は名を題せし処にして

[曲江近くの寺の境内は名前を書きつけた所]

 

十九人中最少年

十九人中最も少年なりき

[孟叔は合格者十九人中最年少だった]

 

今日春光君不見

今日の春の光は君は見ずして

[今日の春の景色を君は見ることなく]

 

杏花零落寺門前

杏(あんず)の花は寺の門の前に零落(れいらく)す

[杏の花は寺の門の前に散り落ちている]

 

■注目点

孟叔の死を悼む思いに注目。

孟叔は今は亡き人。知人の張籍が孟叔の死を悼むのがこの詩。

張籍はかつての孟叔に思いを馳せる。十九人中最年少とは国家試験合格者のこと。何歳だったかは不明だが、受験者中の最年少。

合格すると、寺の境内に名を書き記す。寺の名は長安内にある曲江池近くの慈恩寺(じおんじ)。この上ない名誉。

今日の春景色。今は亡き孟叔。この春を見ることはない。この春は最年少で合格した時と同じ春。その春をもはや見ることはない。

慈恩寺の前に咲く杏の花は散り落ち、虚しい春。孟叔の死を思わせる春。

知人の死を悼む時、過去の春と現在の春とを結ぶ。感無量です。

 

《PN・帰鳥》