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夜行

2011.08.12

風裏村舂未肯停
隔林灯火遠逾青
野田月落路能弁
蕎麦一畦花似星

 

一七八〇年生まれの張維屏(ちょういへい)の「夜行」。夜行は夜歩き。

 

■読みと解釈
風裏村舂未肯停
風裏の村の舂(うす)つきは未だ肯(あえ)て停(とど)まらず
[風吹く中での村の舂つく音は止みそうになく]

 

隔林灯火遠逾青
林を隔てたる灯火(とうか)は遠くして逾(いよ)いよ青し
[林の向こうの灯火は遠くていよいよ青い]

 

野田月落路能弁
野田(やでん)に月は落ち路(みち)能(よ)く弁ず
[野の畠に月が落ち小道ははっきり分かり]

 

蕎麦一畦花似星
蕎麦(そば)は一畦(いっけい)にして花は星に似たり
[蕎麦は畠いっぱい咲き花は星のよう]

 

 

■注目点
夜歩きで何を見たのか。ここに注目。
夜だから暗い。夜風が吹いている。暗い夜風に乗って、舂つく音が聞こえる。音は止みそうにない。見たのではなく、聞こえたのです。農家でしょう。
林があるが、林は見えない。見えるのは灯火。林のすき間の向こうに見える。青い火。舂をついている農家の火でしょうか。
やがて雲が晴れ、月がほんのり。小道がわかるほどの月明かり。畠にも月がさす。畠には蕎麦。まっ白い花が咲いている。畠いっぱいのまっ白い花は、空いっぱいに輝く星。
夜歩きは昼歩きでは見えない物が、幻想的に見える。とりわけ農村の夜歩きはそうでしょう。静かな静かな夜の農村です。

 

《PN・帰鳥》