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古い絶句

2015.05.01

菟絲従長風

根茎無断絶

無情尚不離

有情安可別

 

無名氏「古い絶句」。作者の名は不明。四句からなる古い詩。制作時期不明。

 

■読みと解釈

菟絲従長風

菟絲(とし)は長風に従うも

[菟絲は風で遠くへ遠くへ吹き飛ばされるが]

 

根茎無断絶

根茎(こんけい)は断絶すること無し

[根や茎は大本から断ち切れることはない]

 

無情尚不離

無情は尚(な)お離れざれば

[無情な菟絲でさえ離れることはないゆえ]

 

有情安可別

有情は安(いず)くんぞ別るべけんや

[有情ある人間はどうして別れられよう]

 

 

■注目点

無情と有情に注目。

菟絲はつる草の一種。草木にからみつく寄生草。夏の末に白く薄い赤い小さな花が開く。長風は陰暦五月に吹く風。遠い距離を長く長く吹き抜ける風。

つる草は風に弱い。とりわけ長風に弱い。だがしかし、つる草の根や茎は草木にからみつき、断ち切れず、くっついている。つる草は長風に吹き飛ばされても、大本はつなぎ留め、消え去ることはない。つる草は逞しい存在。

思えばつる草は無情。無情だが、命危うくなっても、命を落とすことはない。

無情なつる草に比し、人間は有情。有情なる人間は、無情なつる草以上に、逞しい存在。個人は勿論、親と子、夫と妻は、離れることも、別れることもできない。命危うくなっても、命を落としてはならぬのです。

 

《PN・帰鳥》