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南方へ左遷される鄭某を送る

2017.01.20

謫去君無恨

閩中我旧過

大都秋雁少

只是夜猿多

東路雲山合

南天瘴癘和

自当逢雨露

行矣慎風波

 

七〇二年生まれの高適の「南方へ左遷される鄭(てい)某を送る」。南方は閩(びん)。今の福建省。

 

■読みと解釈

謫去君無恨

謫去(たくきょ)せらるるも君は恨(うら)むこと無かれ

[左遷されても君は恨むことがないように]

 

閩中我旧過

閩中は我は旧(も)と過(よ)ぎれり

[閩の地は我はかつて立ち寄ったことがある]

 

大都秋雁少

大都(おおむね)秋の雁は少なきも

[およそ秋には雁は少ないが]

 

只是夜猿多

只(た)だ是(こ)れ夜の猿は多し

[ただ夜の猿は多い]

 

東路雲山合

東路は雲と山と合し

[閩へ行く東の路は雲と山が重なって厳しく]

 

南天瘴癘和

南天は瘴癘(しょうれい)和す

[閩の地の南の空は毒気が混じっている]

 

自当逢雨露

自(おのずか)ら当(まさ)に雨露に逢うべし

[閩の地では自ずと雨や露に出会うはずだ]

 

行矣慎風波

行け風波を慎(つつし)みて

[風や波に用心し行くがいい]

 

 

■注目点

鄭某を慰め励ます高適の言葉に注目。

鄭某の左遷先は閩。閩は南方の未開地。そこへ左遷された鄭某。高適はその地を紹介し、慰め励ます。

いきなり「恨むな」と切り出す。恨むなと言う理由。閩はかつて行った所。高適が閩へ行った経緯は不明。その時の経験を紹介する。

秋は雁が少なく、夜の猿が多い。雁が少ないのは、手紙を運ぶ手立てがないこと。夜の猿が多いのは、悲しい鳴き声はどうにもならぬこと。言いたいのは、両方とも侘しさ。

閩への道は雲と山の合体。閩の空には毒気がある。言いたいのはこれも侘しさ。

侘しい侘しい所なのに「恨むな」と言い切る。なぜ。

閩では雨や露に出会うことが出来るから。雨や露は万物を養い潤すもの。それは天子の恩恵。何れ天子の赦免の恩恵があるに相違ない。その日のあることを信じて、風や波の乱を起こさぬよう、過ごすがいい。そう言い鄭某を慰め励ます高適。

 

《PN・帰鳥》