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北方の役人となる劉某を送る

2016.12.16

征馬向辺州

蕭蕭嘶未休

思深常帯別

声断為兼秋

岐路風将遠

関山月共愁

贈君従此去

何日大刀頭

 

七〇二年生まれの高適(こうせき)の「北方の役人となる劉(りゅう)某を送る」。

 

■読みと解釈

征馬向辺州

征馬(せいば)は辺州に向かうに

[辺境の地に向かう旅行く馬は]

 

蕭蕭嘶未休

蕭蕭(しょうしょう)として嘶(いなな)きて未だ休(や)まず

[ヒヒヒーンと嘶き続ける]

 

思深常帯別

思いの深きは常に別れを帯び

[思いが深いのは常に別れの愁いが内にあるからであり]

 

声断為兼秋

声の断ゆるは秋を兼ぬるが為(ため)なり

[声が断ち消えるのは秋の侘しさが加わるからである]

 

岐路風将遠

岐路は風と将(とも)に遠く

[別れ道は秋の風と共に遠く離れ]

 

関山月共愁

関山(かんざん)は月と共に愁う

[辺境の山は秋の月と共に愁い悲しむ]

 

贈君従此去

君に贈り此れ従(よ)り去らば

[君にこの詩を贈り此処から去って行くと]

 

何日大刀頭

何れの日か大刀頭(だいとうとう)ならん

[君は何時になったら還って来るのか]

 

 

■注目点

劉某を送る高適の思いに注目。

最後の句の「大刀頭」は還る意の隠語。大刀頭は刀の先の環。環の音は還に通じ、還る意に使われる。

劉某の行き先は北方の辺境。

前半4句。辺境へ行く馬の様子。蕭蕭は擬音語。寂しげな馬の鳴き声。寂しい秋の季節も加担し、深刻に鳴いたり、断絶して鳴いたり。馬も辺境へは行きたくない。

後半4句。辺境へ行く劉某の様子。別れ道。劉某は去り行き、高適は居残る。二人の間は、秋風に吹かれるように遠ざかり、秋月に照らされるように愁い、引き裂かれる。

別れに臨みこの詩を贈るが、贈り終えると、劉某は馬と共に立ち去る。立ち去ったら、何時還って来るのか。一時も早く、無事に還って欲しい。

劉某の任は北方の役人。任の重さは勿論、気候の重さにも堪える劉某。無事を祈る高適。

 

《PN・帰鳥》