山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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別るるを送る

2015.06.12

秦楼幾夜愜心期

不料仙郎有別離

睡覚莫言雲去処

残灯一醆野蛾飛

 

八四三年生まれの女性詩人魚玄機(ぎょげんき)「別るるを送る」。

 

■読みと解釈

秦楼幾夜愜心期

秦楼(しんろう)は幾夜(いくよ)も心期を愜たせしも

[秦の高殿は毎晩将来への期待を満足してくれたが]

 

不料仙郎有別離

料(はか)らざりき 仙郎に別離有りとは

[思いもしなかった 男仙人が妻と別れるとは]

 

睡覚莫言雲去処

睡りの覚むれば言う莫(な)かれ 雲の去りし処を

[目が覚めたら問うてはならぬ 妻が去って行った先を]

 

残灯一醆野蛾飛

野灯(やとう)の一醆(いっせん)に野蛾(やが)は飛ぶ

[消え入る灯火の中で野をさ迷う蛾が飛んでいる]

 

 

■注目点

女性詩人魚玄機の離別の情に注目。

毎晩将来への期待を満足させてくれた秦の高殿。それは仙人夫婦が仲睦まじく暮らした所。ところがその夫婦。理由は不明だが離別。夫が寝ている間にドロン。夫の目が覚めても、妻の行く先は問うてはならぬとは、妻の言葉。

妻。それは魚玄機自身。ドロンした魚玄機は、野をさ迷い飛ぶ蛾。今にも消えそうな灯火の中を、独りぼっちさ迷い飛んでいる。その私を探してはならぬ。魚玄機の告白です。

妻が夫と、女が男と別れる。無念さ、悔しさ、腹立たしさ、口惜しさ。妻の、女の心情を告白する魚玄機。魚玄機の享年は26歳。夭折です。

 

《PN・帰鳥》