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別るるに贈る

2013.02.01

多情卻似総無情
唯覚尊前笑不成
蝋燭有心還惜別
替人垂涙到天明

 

八〇三年生まれの杜牧(とぼく)の「別るるに贈る」。

 

■読みと解釈
多情卻似総無情
多情は卻(かえ)って総(すべ)て無情なるに似たり
[(普段の)多情は(別れる今は)逆にまったく無情であるよう]

 

唯覚尊前笑不成
唯(た)だ覚ゆるは尊(たる)の前に笑いの成らざること
[(別れの)酒樽を前に笑いにならぬことだけはわかる]

 

蝋燭有心還惜別
蝋燭(ろうそく)には心(こころ)有りて還(かえ)って別るるを惜しみ
[蝋燭には心があって逆に別れを惜しみ]

 

替人垂涙到天明
人に替(か)わりて涙を垂(た)れて天明に到(いた)る
[私に替わって明け方まで涙を流している]

 

 

■注目点
別れをどう表現するか。巧みさに注目。
巧みさは二つ。一つは多情から無情へ。一つは蝋燭の擬人法。
別れる相手とは、普段は多情だったのに、離別の今は無情になった。普段は感情が活動していたのに、離別の今は停止した。酒樽を前にしても、笑顔にはなれぬ。多情から無情へ。これが人間の真理。
蝋燭は普段は無情なのに、離別の場の蝋燭は多情。離別を惜しみ、明け方までしずくを垂れ、泣いている。その姿はまるで人間。
離別。それは人間にとって堪えがたいこと。情が停止してしまう。情の停止は、離別する相手との関係が密である証しなのでは。

 

《PN・帰鳥》