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兵士の歌

2016.03.11

男児可憐蟲
出門懐死憂
尸喪狭谷中
白骨無人収

 

五〇〇年頃の作者不詳の「兵士の歌」。

 

■読みと解釈
男児可憐蟲
男児は憐(あわれ)むべき蟲(むし)
[男は気の毒な虫けら]

 

出門懐死憂
門を出(い)ずれば死を懐(いだ)きて憂う
[門を出ると死ばかり心配している]

 

尸喪狭谷中
尸(しかばね)は狭い谷の中に喪(ほろ)び
[死体は狭い谷川で滅び]

 

白骨無人収
白骨は人の収(おさ)むる無し
[白骨は誰も収めてはくれぬ]

 

■注目点
男児の死にざまに注目。
男児。血気盛んなのが男児。その男児が虫けら同然。気の毒な存在。虫けらの中でも、気の毒な虫けら。取るに足らぬ存在。男児は人間ではない。
虫けら同然の男児が、家から一歩外に出る。出た途端、死ぬことばかり心配。死から逃れられぬ男児。死ぬために生まれてきた男児。

この男児は兵士。死体となり、白骨となる。死体は確認できるが、白骨はできぬ。確認できる死体は谷川で滅び、確認できぬ白骨は、朽ち果てるのを待つばかり。まさに虫けら同然。気の毒な虫けらです。

戦争詩です。戦場で戦う兵士。死んで当たり前。殺されて同然。兵士に憐れみの情をかけるが、それ以上のことはない。心の底では戦争反対を叫んでいるのでしょうか。今も昔も変わらぬのが戦争。

 

《PN・帰鳥》