山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

人の河源に使いするを送る

2019.10.11

故人行役向辺州

匹馬今朝不少留

長路関山何日尽

満堂絲竹為君愁

 

七二一年生まれの張謂(ちょうい)の「人の河源(かげん)に使いするを送る」。河源は黄河の水源地帯。

 

■読みと解釈

故人行役向辺州

故人は行役(こうえき)して辺州(へんしゅう)に向かうに

[旧友が使命を受けて国境に向かうのだが]

 

匹馬今朝不少留

匹馬(ひつば)は今朝(こんちょう)は少(しばら)くも留(とど)まらず

[一匹の馬は一時も留まらず出発する]

 

長路関山何日尽

長路と関山(かんざん)は何(いず)れの日か尽(つ)きん

[長い道程や国境の山々は何時になれば尽きるのか]

 

満堂絲竹為君愁

満堂(まんどう)の絲竹(しちく)は君の為に愁(うれ)う

[部屋いっぱいの音楽は君を見送るゆえに愁いに満ちている]

 

 

■注目点

作者の思いに注目。旧友が使命を受け、国境の黄河の水源地帯へ向かう。向こうには遊牧民がいる。責務重大。一匹の馬に乗る。同乗者はいないのか。先を急ぐのか、一時も留まることなく、慌ただしく出発する。

国境までは長く遠い道と山々。これを克服させるために、音楽が部屋いっぱい、演奏される。演奏者は無数。作者もその一人かも。だが音調は楽しくなく、愁いに満ちている。

なぜ愁いに満ちている。旧友は長く遠い道と山々を克服できるのか。難しいのでは。それを思えば、演奏は愁いに満ちる。作者の心中も愁いに満ちる。

音楽は楽しいはずだが、憂いの種となる。いっぱい演奏されるほど、愁いは増す。

 

《PN・帰鳥》