山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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人の京に還るを送る

2019.08.30

匹馬西来天外帰

揚鞭只共鳥争飛

送君九月交河北

雪裏題詩涙満衣

 

七一五年頃生まれた岑参(しんじん)の「人の京(みやこ)に還(かえ)るを送る」。京は首都長安。

 

■読みと解釈

匹馬西来天外帰

匹馬(ひつば)は西の来(かた)天外より帰るに

[一頭の馬が西方の天の外から都へ帰って行くが]

 

揚鞭只共鳥争飛

鞭(むち)を揚(あ)げて只(た)だ鳥と共に飛ぶを争う

[鞭で激しく叩きひたすら飛ぶ鳥と速さを競っている]

 

送君九月交河北

君を九月 交河(こうが)の北に送るに

[君を晩秋九月に交河の北で見送り]

 

雪裏題詩涙満衣

雪の裏(なか)にて詩を題すれば涙は衣に満てり

[雪の中で詩を書き付けると涙が衣服に溢れ落ちる]

 

 

■注目点

詩の巧みさに注目。

初めの二句は天の外から都の長安へ帰る人の喜びの感情を馬の走る速さで表現する。馬と一体同心のこの人。作者岑参はどんな思いで、この人とこの馬を見送るのだろう。

後の二句は帰る当てもなく、天の外に居残る作者岑参の悲しみの感情を涙で表現する。雪の降る中、この人を見送る詩を作る作者。詩を作っていると、涙がこぼれる。この人と一緒に長安へ帰りたい。

天の外から長安へ帰る人と天の外へ居残る作者を対比する表現。ここにこの詩の巧みさがある。加えて晩秋九月という季節の設定が、人と作者の感情表現を盛り上げる。

 

《PN・帰鳥》