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京に入る使いに逢う

2017.06.23

故園東望路漫漫

双袖龍鐘涙不乾

馬上相逢無紙筆

憑君伝語報平安

 

七一五年頃生まれの岑参(しんじん)の「京(みやこ)に入る使いに逢う」。京は長安。

 

■読みと解釈

故園東望路漫漫

故園をば東に望めば路は漫漫(まんまん)たり

[古里を東の方に望むと道は果てしなく遠い]

 

双袖龍鐘涙不乾

双袖(そうしゅう)は龍鐘(りゅうしょう)として涙は乾かず

[両袖は涙がしとどこぼれ落ち乾く間もない]

 

馬上相逢無紙筆

馬上にて相い逢い紙筆無ければ

[馬の上でばったり逢い紙や筆もないので]

 

憑君伝語報平安

君に憑(よ)りて伝語し平安を報ぜん

[貴男に言伝し無事だと報告して欲しい]

 

 

■注目点

岑参の心情に注目。

岑参は都の長安へ行く使者にばったり逢う。逢った所は長安から遠く離れた所。異民族と国境を接する地。

岑参は今、地方の軍政や行政を司る役人として国境にいる。

国境に来て何年か。年数は判らぬが、岑参は長安へ帰りたい、帰りたいと思い続ける。そんな折、長安へ行く使者にばったり逢う。

使者が羨ましくて、羨ましくてならぬ。長安には家族や友人がいる。その連中と会いたい。手紙で会いたい。だが筆記用具がない。ならば口頭で会うしかない。手紙は連中に届く保証はない。口頭はなおのこと。だが今は口頭しかない。思いあぐねた末、使者に伝言する。不安を抱きつつ。

望郷の涙。情愛の涙。滂沱の涙。無尽の涙。泣きに泣き崩れる岑参。

 

《PN・帰鳥》