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中秋の夜 月を見ず

2012.10.05

陰雲薄暮上空虚
此夕清光已破除
只恐異時開霽後
玉輪依旧養蟾蜍

 

作者は八三三年生まれの羅隠(らいん)。詩の題は「中秋の夜 月を見ず」。中秋の夜なのに月が見えない。

 

■読みと解釈
陰雲薄暮上空虚
陰雲(いんうん)は薄暮(はくぼ)上空に虚(むな)しく
[暗い雲が夕暮れどき上空にむなしく漂い]

 

此夕清光已破除
此(こ)の夕べ清光は已(すで)に破除(はじょ)せらる
[今夜清らかな月の光はもはや壊されてしまった]

 

只恐異時開霽後
只(た)だ恐るるは異時(いじ)開霽(かいさい)の後
[ただ恐いのはやがて雲が消え晴れた後]

 

玉輪依旧養蟾蜍
玉輪(ぎょくりん)は旧に依(よ)り蟾蜍(せんじょ)を養うを
[月が今までどおり蟾蜍(ひきがえる)を飼っていること(玉輪は月の別名)]

 

 

■注目点
中秋の夜は名月を見る夜。なのに名月が見えないと言う。なぜか。ここに注目。
名月が見えない理由の一つ。暗い雨雲が上空に漂っているから。昼間ならまだしも、名月が出る間もない夕暮れどきです。清らかな月の光は期待できない。空虚、破除。無念さを端的に表します。
名月が見えない理由の二つ。万が一、晴れたとしても、蟾蜍が月を食ってしまうから。月は蟾蜍を飼っている。蟾蜍は月の女神の常娥(じょうが)のなれの果てと言います。
中秋の名月への思い。楽しみの一つなのです。

 

《PN・帰鳥》